臨時増刊特集 日常役立つ診療技術
診断篇
VIII.中枢神経系疾患の診断技術
8.網膜電図
米村 大蔵
1
,
河崎 一夫
1
1金沢大眼科
pp.1791-1799
発行日 1976年12月5日
Published Date 1976/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206898
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原理と沿革
脊椎動物眼では眼球後極側に対して角膜側が陽性の電位差(眼球のstanding potential,SP)が存在する.眼球のSPは主に網膜に由来する.眼球のSPが,光刺激の開始(on)と遮断(off)に伴って,変動することをカエルでHolmgren(1865)が発見した.この電位変動は,角膜,水晶体,房水,毛様体などを除去したいわゆる眼杯eyecupでも観察され,主に網膜から生ずる.この電位の時間的変動を描記した曲線を網膜電図electroretinogram(ERG)と呼ぶ.慣習上,電位を縦軸に,時間を横軸にとり,眼球後極側に比して角膜側がより陽性の電位変動を図では上向きの振れとして描く.EinthovenとJolly(1908)らは光刺激口開始(on)後に最初に現れた下向き(網膜SPが誠少する方向)の振れをa波,これに続く上向きの振れをb波,その後の緩徐な上向きの振れをc波,刺激光遮断(off)後の上向きの振れをd波と呼び,この命名は一般化した(図1).Granit2)は薬品に対するERGの感受性の差などに基づき,ERGを3成分(PI,PII,PIII)に分析した(図1A,B).すなわちネコにエーテルを吸入させると,まず,c波の主体をなす成分process I(PI)が消失した.
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