今月の主題 肺のびまん性陰影をめぐって
肺線維症の成り立ちと進展—病理学的立場から
影山 圭三
1
,
薬丸 一洋
2
,
向井 萬起男
2
1慶大病理学
2慶大病理学教室
pp.764-767
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206591
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「肺線維症」とは
いわゆる肺線維症は,肺内に生起される線維化過程が,ある程度,またはある範囲に進展した時の病像と病態を総合して表す慣用的な疾患名,あるいは症候群であると考えられる.塵肺などのような,巣状あるいは限局性線維化巣も,肺内の分布や密度の程度によっては,肺機能全体に深刻な影響を与えることはいうまでもない.したがって,肺内に,いかなる形にせよ,線維化が進展し,肺の臓器機能に影響を及ぼす事態にたち到った時,肺線維症といえばことが足りるように思われるが,このような扱い方ではひとつの疾患としてはあまりにも雑多な内容を含むことになる.このことは,Spainの分類によく示されている1).
現在日本の医学会で問題にされ,厚生省の指定する難病のひとつとして慎重に検討が進められているものは,肺胞領域にびまん性に生ずる線維化過程を主体とする症例で,Hamman-Rich症候群2)で代表される「原因不明または特発性の肺線維症」と呼ばれているものである.
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