今月の主題 肺のびまん性陰影をめぐって
びまん性散布性肺疾患の概念と分類
本間 日臣
1
1順大内科
pp.762-763
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206590
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はじめに
私見の結論から先に述べるならば,与えられた題名のびまん性散布性肺疾患(単数)という病名はないし,したがってその概念も分類もない.また,それを用いる必然性もないと思われる.事実,内容目次を一べつすると,さまざまな疾患がそれぞれの病名に従って記述されることになっている.個々に診断され,治療され得る疾患,すなわち病因,病理発生,病像,経過,治療を異にする疾患を,ことさら一括して扱うメリットはどこにあるのか.筆者の推測によれば,胸部X線像のみから,あるいは肺機能検査測定値のみから鑑別診断を行うと仮定した場合の対象疾患の分類が求められているのだと解せざるを得ない.しかし,X線像は,病変のシルエットであり,肺機能検査値は,通常,両肺over allの値であり,疾患にpathognomonicにむすびつかない.実際,われわれは,X線写真のみ,肺機能検査のみで診断することはない.確定診断は,むしろ他の組織診,細胞診,微生物学的方法によっている.
今月の主題が「肺のびまん性陰影をめぐって」となっているから,びまん性陰影を示す肺疾患にはどういうものがあるか,今までどのように取り上げられてきたかについての解説が求められているのであろう.しかし,上述の理由から過去はともかく,現在および今後このようなまとめの必要が少なくなってゆくことは予想される.
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