春日豊和先生の死を悼みて
遺著"外来の詩"に寄せる
三上 理一郎
1
1東大第3内科
pp.720
発行日 1976年5月10日
Published Date 1976/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206580
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私が春日先生の最近の著書"外来の詩","続・外来の詩"(文庫版,医学研究社発行)の書評を依頼されたのはこの2月中頃でした.その脱稿期限のくる前に,3月25日朝突然先生の計報を知りました,この本に目を通すとき,先生の死が予感されないでもありません.前編の序文の中に,「私自身が49年9月,悪性の胃潰瘍で胃切除をうけ,現在なお治療を続けている日々であり,医師としての得がたい経験に生きてきた心の記念として,本書の出版に踏みきった」と書かれています.さらに昨年12月,続編のあとがきに次の言葉が残されています.「いつもながらの変わることのない皆さんの温かい友情と,懸命に私を大事にし看護をつづけてくれている家族に,心から感謝をしてあとがきを終ります」と…….先生は胃がんで1年半の闘病の甲斐なく,56歳で亡くなられました.この2冊の本は先生の遺著とも言えるものです.ご自身が死を意識して書かれた先生の悲痛なお気持ちを思いうかべるとき,私は途中でいく度か涙を禁じ得ませんでした.
先生には生まれつき文才があって,この本は情緒豊かな文章と鋭い筆致でみちみちています.先生の専門は内科ですが,家庭医に徹するためには,その患者の子供や孫の診療や,健康管理までも引きうけなければなりません.前編には子供についてのエピソードが多くみられます.ここに第10章の「オジーとター坊どこいった」を短く引用してみます.
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