診断基準とその使い方
慢性膵炎の診断基準
小田 正幸
1
,
本間 達二
1
1信州大第2内科
pp.689-691
発行日 1976年5月10日
Published Date 1976/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206570
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はじめに 慢性膵炎の定義ないし概念は,現在なお確立しているとはいえない.臨床像でも,膵石灰化をともなう慢性膵炎ではかなり明確にされ,反復する上腹部痛・脂肪性下痢・X線上,膵部に結石像を認めるなどがおもな症候であり,間歇期でも診断を誤ることは少ない.しかし,膵石症の症例数は多いものではなく,膵石をともなわない慢性膵炎や軽症慢性膵炎といわれるもの,あるいは膵癌などの臨床像と移行し,重なりあい,臨床像を診断の根拠とすることはほとんどできない.
他の臓器疾患ではまた臨床像および診断は組織学的変化によって基礎づけられているが,慢性膵炎ではこの面でさえ混乱し,範囲がかならずしもきめられていない状態にある.組織学的にも石灰化をともなう慢性膵炎あるいは慢性再発性膵炎については病理形態学的にもかなり明確にされているが,膵線維症もしくは膵硬変の診断はされても,慢性膵炎という病理組織学的診断はまれである.膵線維症が膵のどこに,どの程度あれば病的変化とするかの範囲も不明であり,逆に臨床像が慢性膵炎を疑わせたとしても,剖検で膵組織は正常とされることもある.また,肝・胆道疾患,消化性潰瘍悪性腫瘍などでは膵組織に変化をみとめることが少なくないが,随伴性膵炎とされ,高度の線維症をみとめることもある.このように膵の形態学的変化においても慢性膵炎の範囲は定められていない.
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