今月の主題 腎不全の病態と治療
代謝面からみた病態
酸塩基平衡
浦壁 重治
1
,
折田 義正
1
,
湯浅 繁一
1
1阪大第1内科
pp.472-473
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206503
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腎不全時の酸塩基平衡障害
通常,生体内では1日50〜100mEqの水素イオン(H+)が代謝によって生じ,これを緩衝するためにHCO3-が消費される.このため腎では糸球体濾過をうけたHCO3-を完全に再吸収し,その喪失を防いでいるが,さらに腎は積極的にH+,NH3を分泌し,上記のH+を処理して消費されたHCO3-を回収,滴定酸(主としてNaH2PO4),アンモニウムイオン(NH4+)の形で50〜100mEqのH+を排泄し,酸塩基平衡を維持している(図1).
腎病変が進行し,糸球体濾過値(GFR)が25ml/min以下になると,一般に血漿HCO3-濃度が低下し始め,代謝性アシドーシスをきたすようになる.これはGFRの減少により,生体内で産生された硫酸塩,燐酸塩の濾過量が減少し,HCO3-の回収がその分だけ行われなくなるためである.このように,腎不全のアシドーシスは主として糸球体障害によるもので,retention acidosisとも呼ばれ,〔Na+〕-(〔C1-〕+〔HCO3-〕)で求められるanion gapの増加が特徴的である(図2)1).
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