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最近DIC(disseminated intravascular coagulation syndrome 汎血管内凝固症候群,あるいは脱フィブリン症候群 defibrination syndrome,消耗性凝固障害症 consumption coagulopathyともいう)が臨床各科の領域で注目されるに及んで,腎障害ことに腎不全の発症機転にこの現象の関与することが想定されるようになった.
確かに次に提示する敗血症の症例をはじめ,Shwartzman-Sanarelli現象,Waterhouse-Friderichsen症候群,Goodpasture症候群,エンドトキシン・ショック,火傷,電撃症,胎盤早期剥離,羊水塞栓,死胎子宮内停留,白血病ほか各種悪性腫瘍ことにそれの全身性転移時,蛇咬傷,薬物中毒症,異型輸血などで明らかに本症候群を呈する症例で,またいわゆる細小血管障害性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia:MHA)ないし溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS),血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombopenic purpura:TTP),血栓性細小血管症(thrombotic microangiopathy)の症例で,さらには全身性,局所性エリテマトーデス(SLE,discoidal lupus erythematodes),結節性動脈周囲炎,強皮症,Wegener肉芽腫などの各種膠原病患者でDIC様症候群を示す場合に,しばしば腎障害をおこし,乏尿無尿の急性腎不全症状を呈する症例の多いことから,このDICと急性腎不全との間には何らかの発生病理学的ないし病態生理学的な関連のあることが想定される.以下,①果たしてDICが腎不全をひきおこすか,②もしおこすとすればそれはどんな機序によるか,③この場合の腎障害にはよく赤血球の溶血が論議されるが,果たしてそれがこの病変の主体であるか,④この溶血はDICと如何なる関係をもつかなど,誌面の限り考えてみたい.
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