扉
脳神経外科の守備範囲
牧野 博安
1
1千葉大学脳神経外科
pp.449-450
発行日 1975年6月10日
Published Date 1975/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200310
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現在本邦の殆んどの施設が,恐らくそうであると思われるが,脳神経外科診療部門を通称脳外科と呼び,その名の如く主として頭蓋内疾患のみを取扱っている所が多いと思う.我々日本の脳神経外科医は,全世界の日本以外の国々と比較して,唯一のいわゆる"脳外科医"であって,決して誇るべきことではない.
神経系統の発生から考えても,又神経細胞一つ一つ考えても我々が脳だけ考えていて良い訳はないことは熟知しているところでもある.我々に課せられた義務は,常に神経系統を中心に種々の身体の生理的又は病的反応現象を追求し解明せんと努力することにある.その場合に脊髄とか末梢神経を除外して考えることは出来ない.神経系統の疾患について考えを進めるときも,末梢の方から中枢の方へ低次ニューロンから段々と高次ニューロンに向って考えなければならないことは屡々ある.その意味で我々の取扱う患者がどうして脳を中心としたもののみに限られてくるのか,そしてそれが本邦のみにある現象であることを不可思議に思うことが多い.その主たる原因は医学界の歴史的背景によるものと思われるが,最近の神経生理学をみても,一細胞の起す現象をつかまえんとする努力がなされているのを考えても神経系統を頭蓋の中と外で考えることはおかしい.
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