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第67回日本公衆衛生学会「特別講演1」の,堤修三大阪大学大学院教授「わが国の保健医療制度の現状と展望」のお話の最後に,「この学会は,Public healthの学会ですので」と言われて,簡単にPublicとPrivateについて触れておられた.この発言は,暗に衛生行政として現在すすめられている生活習慣病対策の一環として,健康診査・保健指導などを通じて個人的な生活に踏み込んでいることについて言われたのではなかろうかと私には感じられた.講演会場を出た後に,公衆衛生学会の中での主だった方数人にこのことの意見を伺っても,ほとんど反応が見られなかったが.
多くの公衆衛生学の教科書に引用されているWinslowの定義の中にある,「through organized community efforts(共同社会の組織的努力)」を私流に解釈して,自治組織・団体とすれば,それは,わが国では,国は国会の定めに基づき,自治体は自治体議会の定めに基づき,事業体は事業体の規約に基づく意思決定機構の定めに基づいて行うことと理解できよう.衛生行政を見ると,労働衛生では,労働基準法に規定されている労働条件の原則は,労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならないとされ,労働者と使用者が,対等の立場において労働条件を決定すべきものであると定めている.労働者に対して定期健康診断とその他の必要により特殊健康診断が行われ,平成9年「労働者健康状況調査」によれば,定期健診は87.7%,がん検診・人間ドックは34.3%受診しているとある.学校保健では,学校教職員生徒に対して,学校保健法に基づき学校における保健管理および安全管理に関し必要な事項を定め,幼児,児童,生徒及び学生ならびに職員の健康の保持増進を図り,もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的とし,発育状態,健康状態,肥満傾向児および痩身傾向児の出現率が測定されている.
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