特集 これだけは知っておきたい治療のポイント
I 循環器・高血圧
5.弁膜症をとり扱うときの問題点
弁膜症患者の生活指導
広沢 弘七郎
1
1東女医大・心研所
pp.1558-1559
発行日 1973年11月20日
Published Date 1973/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205003
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弁膜症の弁の変形は手術でもしない限り治らない.弁の変形による狭窄・逆流の血行力学的負荷は,24時間を通じて心筋等にかかっており,運動などにより更に大きな重荷となる.ある程度以上の重さの狭窄・逆流は心筋肥大→心筋障害を次第に増して,病気を重症化させ,最後には生命の危険を招来するまでになる.どの程度までの逆流や狭窄であれば,適当な節制を守ったとして,その患者のいわゆる天寿まで生命を長びかせ得るかは,今日,何も分ってはいない.言うなれば,定量的には殆んど分らないまま,いつ破綻をおこすか分らないという可能性におびえながら,何となく運動量を規制したり,生活の幅を狭めたりしているのが実情ではないかと思う.言い換えれば,じっと寝て安静にしていれば,心臓に対する負荷という点に関する限り,最も理想的であるが,それでは生きる喜びもないし,経済的にも苦しい.そこで,苦しくなければといった程度の運動量制限で,何となく我慢しているのが,今日の医療の実際ではないだろうか.
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