診断のポイント
撒布性肺陰影をみたとき—その診断のすすめかた
西本 幸男
1
1広島大・第2内科
pp.2132-2138
発行日 1972年11月10日
Published Date 1972/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204494
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撒布性肺陰影を示す疾患
気管支・肺疾患においては,喘息や気管支炎など一部のものを除くと,ふつう胸部X線写真に何らかの異常陰影がみられるものであるが,鑑別診断の際とくに困難を感ずるのは,両肺に比較的均等に撒布した微細な粒状ないし線状陰影が認められた場合であろう.
最近のごとく,高齢者の胸部写真を読影する機会が多くなると,外見上ほとんど異常がないと思われる症例においても,時としてこのような陰影を示すものに遭遇する.かつて宝来教授1)はかかる所見を異常線状影の立場から読影し,大都市の住民でとくに長期にわたる喫煙歴を有する老人に多いことを指摘している.かかる症例の多くは同時にせき・たんなどの症状を有し,明らかに慢性気管支炎と診断されるが,中には自覚的に症状を欠き,理学的検査あるいは肺機能所見にもほとんど異常を認めないものもある.かかる症例を疾患と考え,さらに精密検査を進めるべきであるか,あるいは60年あるいは70年という長年月にわたる生活史の一端として把え,ある程度やむを得ないものと考えるかは一概にはいえないことであって,結局はcase by caseに判断しなければならない問題であろう.
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