臨床家の薬理学・9
Ⅸ.不整脈治療剤
今井 昭一
1
1新大・薬理学
pp.1916-1917
発行日 1972年9月10日
Published Date 1972/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204456
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不整脈の発症要因
心筋に対し抑制的に作用する薬物はいろいろあるが,そのうち,心筋の興奮性ないし自動興奮性を抑え,不応期を延長する性質をもっものは,不整脈の治療薬として利用されている.治療の対象となるのは心房性頻拍,粗動,細動および心室性の期外収縮,頻拍である.これらの不整脈のうち,粗動や細動についてはそれがきわめて複雑な形の不整脈であるため,その発生機序を説明する学説が種々現われている.その代表がSir Thomas Lewisの提唱した興奮旋回説(circus movement theory)と,Prinzmetalらの提唱になる異所性興奮源説(ectopicfocus theory)とである.
興奮旋回説では,興奮が一定の輪形経路をまわって出発点の細胞をもう一度興奮させるので,反復興奮が起こるとされる.Lewis(1921)は,興奮旋回の場として上大静脈と下大静脈との開口部の周囲の輪状の心房組織を考えている.同じ興奮が出発点の細胞をもう一度興奮させるためには,出発点の細胞が不応期から回復していることが必要である.したがって不応期の短縮があれば興奮の旋回が起こりやすい.また興奮の伝導がおそくなれば,興奮が出発点にもどってきた時に出発点の細胞が不応期から回復している可能性が大となるから,興奮伝導速度の低下も興奮の旋回を起こしやすくする要因である.
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