Editorial
神経病のトピックス
加瀬 正夫
1
1関東逓信病院
pp.161
発行日 1972年2月10日
Published Date 1972/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203989
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かつて医学の暗黒野として,特にわが国ではきわめて限られた人びとの関心しか得られなかった神経学の領域において,近年の進歩発展はまことにめざましいものがある.とくに公害病の先駆的役割をはたす宿命をになった水俣病やスモンが,わが国の神経学者を中心とした多くの研究者の手によって解決されつつあることは,国辱的な疾患であるとはいえ,神経学を含めたわが国の医学水準のレベルを示すものといえよう.思いもかけないことがおこりえて,思いがけない不幸とはかりしれない労苦の集積が一応の決着をつけたのであるが,私たちの周辺にはあまりにもこのような不安が多すぎる.何がおこるかわからないという疑惑を,心ならずも絶えず抱かせられている昨今である.
さて神経病の近年における最大のトピックスの1つは,パーキンソン病におけるL-ドパ療法の発見であった.これはおそらく神経学の歴史において空前の出来事であり,これを契機として治療法の限られた各種神経疾患の真の治療法の発見がのぞまれる.すべて新しい薬剤はその出現の当初において過大に評価され,ついで反動として過小評価され,最後に本来あるべき評価におちつくのが普通であるが,L-ドパはその種々なる副作用にもかかわらず,薬効がそれを上回るがゆえに評価のゆるぎがみられない.けれども同時に,副作用を少なくして効果を高める努力がつづけられ,種々なるエコノマイザーがあらわれてきた.その真の評価は今後において決定されよう.
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