治療のポイント
十二指腸潰瘍の手術適応
中野 貞生
pp.1764-1766
発行日 1971年11月10日
Published Date 1971/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203903
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"比較的手術適応"では適応基準が不統一
十二指腸潰蕩の手術適応のうち,絶対的適応(大量出血,穿孔,幽門狭窄)に関しては内科側と外科側との間に個々についての多少の見解の相違はあるが,まずその基準は確立されている.
ところが比較的手術適応という問題に対しては,内科と外科の間はもちろん,それぞれの側の中でも,その適応基準は必ずしも統一されていない現状である.それは消化性潰瘍の病因論,潰瘍もしくは潰瘍症という疾患の病態に対する認識論の差異に由来するもののようである.それに加えて今までの十二指腸潰瘍の診断が,良性疾患であり悪性化の心配がないという理由から,球部変形,ニッシェ証明という存在診断にとどまり,早期胃癌や胃潰瘍の診断に対すると同じような態度で,精密に診断するという努力が少なかったため,形態学的な面で解明が不十分であったきらいがある.それと同時に,外科的根治術を受けて得られた切除標本が,球部の潰瘍が鉗子やペッツで挫滅されていたり,潰瘍そのものが曠置されてしまっていて,十分に病理検索をなしえなかったことも原因の1つと考えられる.
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