治療のポイント
胃潰瘍の食事療法
早川 滉
1
1長大第2内科
pp.1340-1342
発行日 1971年8月10日
Published Date 1971/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203795
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胃潰瘍の食事療法の考え方
胃潰瘍の食事療法については従来より多くの意見が提唱されている.この意見を大別するとLeube, Cruveilhierらによって提唱された庇護制限食事療法と,Lehnhartz, Meulengrachtらによって始められた積極的栄養補給食事療法に分けられる.わが国においては南・吉光寺などが食事箋を本邦向きに考案しているが,これはいずれもLeube, Ewaldらの方式に似て潰瘍庇護を主眼としたものであり,一方,積極的な方式としては,山川らの主張した高カロリー豊富食事があげられる.その後この方法は,黒川・松永・山形らにより改良が加えられ,Meulengrachtほど積極的ではないが,従来の庇護療法より早期に高カロリー食を与える食事箋をとり入れ,潰瘍の治癒に好成績をえたと発表している.
胃潰瘍の治療は,近年抗コリン剤を初めとする抗潰瘍剤が多く発表されているが,治癒期間・治癒率などは従来より改善されておらず,内科的治療のなかで食事療法の占める割合は大きいと考えられる.筆者は胃X線・内視鏡検査が十分に行なわれなかった時代に,食事療法の考え方の中心となっていた,潰瘍の出血あるいは胃粘膜に対する機械的刺激,胃の運動亢進を抑制する点を考慮した庇護療法をそのまま用いてはいないが,一方Meulengrachtらが始めた,大量の出血直後より多量の食事を投与することには症例の選択に注意をはらうべきであり,流動食でも再出血をみることがある点より,直後には絶食期間をもうけ,その後できるだけ早く高カロリー食をとるべきであると考えている.
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