治療のポイント
新しい抗癌剤
古江 尚
1
1癌研付属病院内科
pp.1343-1345
発行日 1971年8月10日
Published Date 1971/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203796
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抗癌剤の進歩
Mitomycin C(MMC)が導入されたのが1956年,それから15年経った今日でも,わが国において最も広く用いられている抗癌剤はMMCである.MMCは強い抗癌作用と広い抗癌Spectrumを有するからであって,総合的になおMMCにまさる薬剤は見出されていない.しかしそれでも近年,それぞれ特徴をもった薬剤が多数臨床の実際に導入されているし,また現在でも開発されつつある.今日われわれは,癌の種類,あるいは患者の状況によって,それぞれの薬を使い分けることができるようになっている.しかもこれらの薬剤は作用機序も異なっており,これらを時期を異にして,あるいは同時に併用し投与することによって,よりすぐれた効果をうることもできる.
新しい各種抗癌剤の導入,あるいはこれら薬剤の投与法の進歩に支えられて,今日では末期癌といえども,癌の縮小〜消失,生存期間の延長,社会生活への復帰が可能であり,特に白血病,悪性リンパ腫,絨毛癌,神経芽腫,睾丸腫瘍,その他における効果は甚だ著しいものがある.30年前,われわれは末期癌患者にはただMorphineを与えることができるだけであった.15年前,抗癌剤は一時的に腫瘤の縮小をもたらしうるにすぎなかった.しかし今日われわれは,末期癌といえども,長期間にわたってわれわれのコントロールのもとにおくことができる,そういう時代をむかえっっある.
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