Editorial
心不全—現在の問題点
鷹津 正
1
1阪医大第3内科
pp.1029
発行日 1971年6月10日
Published Date 1971/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203711
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心不全は心筋収縮不全を意味する.心臓に異常の負荷がかかるときに心臓はまずStarlingの心臓法則により心拍出量を増し,ついで肥大をもって代償せんとするが,やがては心筋の収縮不全をきたすに至る.このさい交感神経の興奮によって心拍数の増加,心収縮増強作用も関与する.心収縮不全による心拍出量の減少,循環血量の減少は腎血流量の減少,腎尿細管のNa再吸収促進を招来し,循環血量の増加をきたさんとするが,かえってこれが心臓の負荷を増大するに至り,浮腫,その他のうっ血性心不全症状をきたす.
心筋収縮の機構に関連して現在最も問題となる点は,心不全に際してエネルギーの産生・貯蔵・利用のいずれに障害があるかである.心不全患者の冠静脈洞血を用いての研究成績において,エネルギー産生には異常がないことがBingにより提唱されて以来,動物の実験的心不全のみならず,心不全患者の摘出心筋のミトコンドリアの酸化的燐酸化,ATP, CPの含量,酸素消費量には変化がないとする報告が多く,したがって,心不全の成因をエネルギーの利用に求めんとし,myosin ATPaseの減少を提唱するものがある.しかし,エネルギー産生の過程における数種の酵素活性には異常があるとするものがあり,この問題の解明は今後の研究にまたねばならない.
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