臨時増刊特集 身体所見のとり方と診断のすすめ方
●身体所見のとらえ方
VII.腹部
4.産婦人科の立場から
足立 春雄
1
1徳大産婦人科
pp.821-824
発行日 1971年5月20日
Published Date 1971/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203670
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確かに近代医学の粋を集めて考案され発展してきた各種の補助診断法は,病気の診断や治療に格段の進歩をもたらしたことには何人も異論のあるはずはない.しかしながら,それらの手段にあまりにも頼りすぎるきらいがないでもない.
妊娠初期の「悪心・嘔吐」という主訴だけを取りあげて,胃ときには腸のX線診断が行なわれ,その後の妊娠の持続に不安を抱かせ,妊娠の中絶を強く希望するまでになる患者は決して稀ではない.補助診断法はどこまでもphysical examinationの医学的な裏づけのために行なわれるべきもので,補助診断法による成績の総合的結果として診断を決定すべきではなく,どこまでも医師の主体性の下での補助診断法でなければならない.これは今日の医学教育の歪みか保険制度の欠陥に原因を求めなければならないかも知れないが,さらに日頃筆者が不安を感じていることの1つに,現在の臨床医学はほとんどが男性医学ではないだろうかという疑問がある.
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