臨床家の遺伝学入門・3
遺伝の物質的基礎
大倉 興司
1
1東京医歯大人類遺伝学
pp.315-318
発行日 1971年3月10日
Published Date 1971/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203539
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遺伝の物質的基礎
遺伝子が染色体上に一定の順序で1列に配列していることは,多くの動植物の交配実験から明らかであり,ヒトでも同じである.その遺伝子がどのように親から子,子から孫に伝えられてゆくかという遺伝のしくみは,配偶子gamate(精子および卵子)形成における染色体の行動,すなわち生殖細胞の分裂における染色体の行動を知ることによって理解できる.
ヒトの染色体は1956年にTjioとLevanが胎児の肺組織を培養し,分裂細胞の染色体を観察し,男女ともに22対の常染色体autosomeと,女性ではやや大型の2本のX染色体を,男性は1本のX染色体と小型のY染色体をもち,それぞれ合計46本の染色体をもつことを示唆した.その後,末梢血から白血球を分離し,人工培養液中でリンパ球を増殖させ,その分裂像を観察することが可能になり,また他の組織も培養して,増殖する線維芽細胞の分裂像が観察できるようになり,無数といえる観察から,ヒトの染色体数と性染色体の構成はTjioとLevanの示唆するとおりであることが認められた.
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