Editorial
肥満と食生活
吉川 春寿
1
1前東大栄養学
pp.153
発行日 1971年2月10日
Published Date 1971/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203491
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肥満とは身体の脂肪組織に中性脂肪,すなわちトリグリセリドが増量し,その量が正常の範囲を越えた状態をいうのである.トリグリセリドを構成するグリセリンは脂肪組織で,血液中からとり込んだグルコースの中間代謝産物であるグリセルアルデヒド-3-燐酸が還元されて生じたグリセロ燐酸から由来するのであって,グリセリンが直接それに利用されることはない.脂肪酸としては,血液によって運ばれてきたトリグリセリドがリポプロテインリパーゼによって加水分解されてできた脂肪酸も,グルコースの代謝でできたアセチルCoAからそこで新しく合成される脂肪酸も利用される.
貯蔵脂肪は,一方ではホルモンの影響をうける脂肪分解作用によって,脂肪酸とグリセリンとに分かれて血中に送り出され,ほかの場所で消費される.このような脂肪組織でのトリグリセリドの合成と分解とは,昔考えられていたよりもはるかに活発に行なわれつつ釣合いの状態にあるので,この釣合いが合成の優勢な側にかたむいたときに肥満が起こってくる.これら脂肪酸の合成・分解とか,トリグリセリドの合成・分解のメカニズムについては,最近の生化学の進歩によってだいたい明らかにされた.現在研究が進められているのは,これら脂肪代謝に関与する酵素系の中で,どこが調節段階になっていて,その段階がいかなる因子によって影響をうけるであろうか,という点である.
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