救急診療
脳卒中患者の輸液
飯田 喜俊
1,2
1淀川キリスト教病院内科
2阪市大
pp.386-388
発行日 1970年4月10日
Published Date 1970/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203030
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脳卒中と体液異常
脳卒中患者の輸液で問題になるものに,まず脱水症がある.これは意識がなくなるために経口的に水摂取ができなくなり,さらに嘔吐,発熱,発汗,過剰換気などのために,水‐電解質の喪失をきたすことが原因となる.また,尿濃縮の障害があって多尿となることも脱水症を増悪させる.このような患者では口渇感が消失することが少なくなく,脱水症が高度になっても気がつかないことがしばしばである.それ故,口渇感の有無が水欠乏に対する輸液の指標にはなりえないのである.さらに悪いことには,これらの体液異常により生じた脳症状,例えば脱水症における精神混乱や意識障害,水中毒のさいの痙攣などを,その十分な原因追及なしに,簡単に脳卒中それ自体によるものとし,適切な対策がなされないことが少なくなく注意を要する.
第2の脳卒中における体液異常として,不適切な輸液を行なった結果水中毒や食塩過剰をきたすことがある.脳卒中をきたす患者は老人の場合が多く,いわゆるホメオスターシスも十分でない,さらに前述した口渇感の欠如もこの医原性の体液異常をきたす原因となる.そして,心機能の障害があると肺水腫などをきたすことにもなる.
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