内科専門医のための診断学・2
胆嚢疾患の診断法
真下 啓明
1
1北大第2内科
pp.225-227
発行日 1970年2月10日
Published Date 1970/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202988
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既往歴の重要性
患者の診察にあたって既往歴のとりかたの巧拙が診断のうえに大きく影響することはあらゆる場合にいえることである.胆嚢疾患が臨床上の便宜さのゆえに胆嚢炎,胆石症,胆道ジスキネジーの3者に分けられ,しかもこれら3者が,たがいに因果関係をもって病態を形成していることは,v.Bergmann以来,ひろく臨床家の概念になっている.
典型的な右季肋部を中心とし,ときに背部,右肩に放散する病痛のくり返し,さらに黄疽の出現という既往歴があれば胆石の存在は確実である.しかし,このような典型的な症状においてのみ胆石の存在が考えられるのではない.疼痛発作にしても統計的にはむしろ心窩部痛として訴え,あるいは狭心痛として訴えることもある.後者の狭心痛との関連はいわゆるseferred painの考えかたから説明されるが,他面,実験的な根拠から胆嚢よりのafferentの刺激が心臓,とくに冠動脈にefferentな刺激となり心電図の変化としてとらえられるとされている.一方,30-40歳台に明らかに胆石の存在を思わせる疝痛発作をくり返しながら,その後20年も全く無症状であるという症例もあり,いわゆるsilent stoneの存在もある.
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