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医療事故と法医学—どう防ぐべきか
野田 金次郎
1
1信大法医学
pp.198-200
発行日 1970年2月10日
Published Date 1970/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202979
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医師の社会における立場
応用生物学の一分科と考えられる医学が,各大学の医学部や研究所の規模の大きさからも考えられるように科学に大きな独立の地位を示しているのは,もちろん社会構成員全員の健康に直接関連しているという点である.われわれの研究も,その成果が直接に,また少なくも間接に社会に還元さるべきものであることも明らかである.しかしこういう点があまりにも当然のことなので,ただなんとなく慣れてしまって意識下にひそんでしまっているのではなかろうか.筆者は,かって医療事故の実態を知ろうとして全国的な調査をしたことがあり*,その結果の総括的な感じとして,前記のことを痛感させられているのである.といって医師のみを責める気は毛頭ない.なぜならば,医師をそこまで追い込んでいる誘因がいくつか明確にされたからである.医師の社会における立場などとの悪循環は,その半径が順次大となりつつある現在,医業にたずさわっている人々の,ある程度のかつ短期間の犠牲の上に,この循環をたち切らなければ,結局社会の支持は遠のき,抜本策は永久にわれわれの手に入らないであろう.
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