メディチーナ・ジャーナル=厚生省
韓国におけるコレラ—その現状と影響度
実川 渉
1
1厚生省検疫課
pp.1281
発行日 1969年11月10日
Published Date 1969/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202877
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流行経過
今年のコレラ発生は,例年にくらべ,早期かつ大規模に進展し,わが国検疫当局は早くよりその蔓延を警戒していたが,9月に入り,ソウル放送は韓国西海岸地方に疑似コレラが発生したことを報じた.9月3日ただちに外務省を通じ公式発表をまったところ,その晩になって在韓大使館より,本疾患は腸炎ビブリオによる食中毒である旨伝えてきた.翌4日韓国日報は「死をよんだアサリ貝—ビブリオによる食中毒」という見出しで本件を報じた.しかしながら,発生はその後も続き,地域も限局せず拡大しているところから,なおコレラの疑いはあるとして,わが国検疫陣の警戒体制は解かれなかった.9月9日,韓国保健社会部(わが国の厚生省にあたる)は,本疾患の急速な波及状況にかんがみ,コレラに準ずる防疫体制をとることを発表し,コレラ汚染地区として,全羅北道群山市等2道1市郡を指定し,世界保健機関(WHO)に通報する旨公表したが,その原因菌についてはアジア型でもエルトール型でもない新しい型の菌であると述べた.
なぜこのように,原因菌について説を変えたり,あいまいな態度をとったか? 多分に政策的な感がしたが,一方にはNAGも疑われ,この解決は,流行菌株について直接検査する以外にないとして,9月15日筆者らは韓国にとび,現地調査を行なうとともに原因菌の分与をうけ19日に帰国した.
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