診断のポイント
肺真菌症
大平 一郎
1
1慈恵医大内科
pp.47-48
発行日 1969年1月10日
Published Date 1969/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202507
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真菌症発病増加の原因
真菌症には幾多の種類があり,放線菌症を除いては元来比較的まれな疾患とみなされていたが,洋の東西を問わず本症は最近増加の傾向にある.その原因として近年治療医界における化学療法の急速な進展や副腎皮質ホルモン剤の普及があずかって力がある.さらに交通貿易などの著しい発達に伴い,多くの病原性真菌が容易に撒布吸入され,発病の機会を多くもたらし,また本症に対する関心がしだいに高まりつつあることも本症増加の一因としてあげられるであろう.
しかしわが国で発病する本症の種類は案外少なく,放線菌症を除いては,その大多数はカンジダ症であり,次がアスペルギルス症,わずかにクリプトコッカス症をみる程度である.これ以外にはごくまれにムコール症,ノカルジア症が報告され,ヒストプラズマ症に至ってはわが国での存在は疑義がある現状である.したがってわが国では真菌症,特に肺真菌症を診断する場合は肺・気管支のカンジダ症あるいはアスペルギルス症を念頭におくことが必要であり,稀に存在するクリプトコッカス症,その他の真菌症はほとんど考慮する必要はない.
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