EDITORIAL
臨床医学に対する最近の心臓生理学の応用
佐野 豊美
1
1東京医歯大心臓血管病研究所
pp.202
発行日 1968年2月10日
Published Date 1968/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202091
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最近の心臓生理学の発達はまことにめざましく,臨床心臓病学の長足の進歩もこれによるところが大きい。紙面にかぎりがあるので,話を電気生理学関係にしぼつても,片鱗すらつくしえない。
臨床における心臓電気生理学といえば,まず心電図が頭にうかぶ。その理論が真の科学らしい様相を示してきたのは実は最近のことである。従来も心臓内の興奮波伝播過程により心電図の棘波の説明がなされてはいたが,単に棘波の形より伝播過程が想像されていたにすぎない。したがつてどのように説明すれば矛盾少なくまとまるかによつてその説の価値が定まつた。最近多極導子による心室内誘導でその伝播過程が直接に示されて初めて,立証された伝播にもとづいて説明されるようになつたのである。心起電力と体表電位との関係を論ずる誘導理論もBurgerの理論が出現してから一変した。いままでと異なり,心起電力の坐は体中心になくてもよく,人体は無限均一導体と考えなくともよく,真実に近い複雑なかたちが比較的簡単なかたちで議論できるようになり,数多の業績も現われ,それにもとづくベクトル心電図誘導法も多く現われた。
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