Japanese
English
綜説
最近の網膜生理学
Recent Advances in the Retinal Physiology
及川 俊彦
1
Toshihiko Oikawa
1
1東北大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Tohoku University School of Medicine
pp.202-214
発行日 1958年6月15日
Published Date 1958/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906018
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はじめに──網膜生理学の概観と問題点 脊椎動物の網膜を生理学的に見る場合,我々にとつて確かであると思われる事実は大凡次のようなことである。(1)網膜には3個のneuroneの連鎖関係がある。即ち,視細胞(錐体及び桿体),両極細胞,神経節細胞,この最後の神経節細胞の軸索突起が視神経に当る。(2)視細胞中には種々の選択的吸収能を持ついくつかの感光色素がある。この感光色素は光によつて特殊の光化学変化を起し,分解の後再生が起る。(3)神経節細胞そしてその軸索である視神経線維は,光刺激に対して一定の関係のあるスパイク電位を以つて反応する。(4)網膜は光刺激に対し緩電位slow potential(網膜電流,ERG)を示す。これはmassresponseであり,その起原は分らない。
これらの諸事実は,網膜そのものの,又網膜における出来事のdetailの1つではあろうが,その全てではなく,而も各々の事実の間を結び付ける何ものもない。在るものは対応だけである。例えば,視細胞,両極細胞,神経節細胞,これら3個のneuroneの系列,こういつたCajalのneurone説,加うるにPolyak1)2)の業績による網膜のこの組織像は,光刺激の感受とこれを視神経を通して視覚中枢に伝える迄の興奮伝達の連鎖関係に直接対応できると,信じられている。然しこのように網膜の組織像が機能と結び付けられると,これは最早や概念的な推測と言つて過言でない。
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