痛み
第1部 人は痛みとどうたたかつてきたか
清原 迪夫
1
1東大麻酔科
pp.67-69
発行日 1968年1月10日
Published Date 1968/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202065
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はじめに
現在では,生後3カ月ごろから始まる予防注射が,私たちが生涯対決しなければならない痛みの受けはじめだろうか。もちろん,生命誕生のよろこびの前には,分娩に伴う痛みがあつて,これが腹を痛めたきずなとして母と子とを永遠に結びつけているわけである。ときには,奇型のあるために,生まれおちて何時間もたたないうちに,メスの洗礼を受ける新生児もいるが,こういう例外はべつとして,とにかく,これから幾十年の人生で遭遇する,さまざまな傷害や炎症,そして最後の死にいたるまで,私たちの日常生活のなかに,痛みの問題は幻影のようにつきまとつていて,ひどい痛みが起こると,ことのたいせつさを明確に知らせてくれる。
痛みの問題は,個体発生の立場からみても,また系統発生的にながめても,日常切実な問題である。痛みが起こると,一刻も早くのがれたいと思う。そのように,だれでもが知つている感覚でありながら,実はその成立する仕組みの詳細がわかつていないから,定義することはむずかしい。
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