痛みのシリーズ・9
関節の痛み
清原 迪夫
1
1東大麻酔科
pp.1040-1041
発行日 1966年7月10日
Published Date 1966/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201400
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関節の痛みを起こす疾患のなかでも,激烈な痛みを特徴とする痛風は,高尿酸血症や尿酸塩の沈着による痛風結節の存在から,尿酸代謝異常による疾患であることが知られている。
痛風患者の尿酸関節内注入実験では,尿酸塩溶液や無結晶尿酸塩は無効であるが,顕微鏡下で針状を示す尿酸塩結晶では.痛みを特徴とする明らかな炎症反応を示した(Howell & Seegmiller,1961)が,この反応は24時間以内で消失する。炎症反応初期には,注入尿酸結晶は.滑液の白血球中に見られ,痛風発作中この結晶の喰菌作用が見られたが,無症状間歓期には結晶を含んだ滑液中には特記すべきこともなかつたという。痛風関節から吸引した液の90%に尿酸塩結晶が発見され,これが尿酸塩注入実験の根拠になつた。結晶は長さ10〜15μ.15-24mg/mlの懸濁液でつくられ,pHは7.0〜7.2である。生理的食塩水を等量注入した対症例では反応が起こらないが,尿酸塩懸濁液では注射後2時間で,かるいこわばり,かるい腫張,圧痛,温感,紅斑,筋力低下が起こつている。痛みも注射後2時間で突然起こつて,初めはかるい刺痛様であるが,つぎの2時間は持続的な鈍痛であり,それにつづいて深部の挫されるような激痛が大腿全部から中枢端に放散する。これは不規則な発作型を示すが,引き裂かれるような痛みがこれに重畳し,関節の過度の伸展と圧痛が強くなる。4時間後には.被検者は激痛のために疲憊したという。
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