痛みのシリーズ・11
傷害や炎症の痛み
清原 迪夫
1
1東大麻酔科
pp.1338-1339
発行日 1966年9月10日
Published Date 1966/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201481
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発痛物質と作用機序
自発痛や痛覚過敏を起こす傷害は,その原因が物理的刺激であれ化学的な刺激であれ,生体にとつては侵害的な性質をもつている。また種々の化学的物質,細菌毒,動物性毒は,いずれも体内の生体反応を介して痛みを起こしてくる。この痛みを起こす体内の物質は,すでに数種以上にわたつて証明されていて,それぞれが単独ないし協同してはたらき,痛みを起こす。たとえば,細胞が壊されるとカリウムが遊出し,その遊出が十分に速ければ痛み神経終末を興奮させ,また肥胖細胞が破れるとヒスタミンを遊離して,痛みを起こす濃度より高ければ痛みを起こす。皮膚は,ヒスタミンのほかにイリン様の有機酸があるから,皮膚傷害のときは,これらの物質の相互作用で痛みが起こつてくる。神経組織中に不活性の結合型で存在するポリペプタイド,P物質は逆行性刺激や軸索反射で遊離され,痛みや痛覚過敏を起こしてくるし,イリンも同様とみられている。
炎症性滲出液中の乳酸のような酸の蓄積も,痛みの発生を促進させようし,血小板がセロトニンを,赤血球がカリウムを遊離し,血漿がブラジキニンやカリジンのようなキニンを形成しうるから,血球や血漿から遊離される物質も,たいせつな役割を占めている。
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