--------------------
きのう・きょう・あした
島村 喜久治
1
1国立療養所東京病院
pp.73
発行日 1967年1月10日
Published Date 1967/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201631
- 有料閲覧
- 文献概要
人間の医学
×月×日
かねがね大学医学部のありかたに疑問をいだいていたが,友人が某大学の付属病院に慢性腎炎で入院して死亡,最近その遺稿を読んで,疑問は焦点を結んでしまつた。
血液や尿の検査には非常に熱心で優秀であった若い医局員に,腎炎の友人が食事の不満を述べると,そんなことは医者の知ったことではないという答えが返つてきた。奥さんには,われわれは予後をひたかくしていたのに,ある医局員はとくとくと,あと3ヵ月もてばいいが,と説明して,奥さんを卒倒させた。いよいよ死が迫つたとき,隣りの内科に入院していたら腹膜灌流をやる専門家がいるんですが,うちの教室にはいませんからね,と放言したのまでいるという。ここには人間の医学が存在しているのか。精神科がなかったら,獣医学部といつてもおかしくない医学しか扱われていないのではないか。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.