EDITORIAL
結核の治療—化学療法の限界
島村 喜久治
1
1国立療養所東京病院
pp.71
発行日 1967年1月10日
Published Date 1967/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201629
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肺結核の治療は,療研(結核療法研究協議会),日結研(日本結核化学療法研究会),国療化研(国立療養所化学療法共同研究班)などのすぐれた共同研究によつて,みごとに定式化されている。それは,臨床医学中随一といつていいほどの科学的検定をへた定式化である1)。すなわち,初回治療例ではstreptomycin・INH・PASの1次薬3者併用6ヵ月ないし1年で排菌陰性化95%,陰性化しない例にさらにkanamycin・ethionamide・cycloserineの2次薬3者併用6ヵ月を加えれば70%は陰性化する。これでも陰性化しない例にはviomycin・ethambutol・INHを6カ月つづければ,さらに40%の排菌が止まる。結局,最初からみれば0.9%しか菌陽性例が残らないという計算である。
しかし,現実は計算を裏ぎる。副作用や患者の恣意などによる脱落が少なくないのと,菌陰性化がそのまま治癒につながらないからである。脱落は管理が悪いと30%をこえる。また排菌が陰性化しても空洞の残つている例からの再悪化率は5年で39%にも達する2)。これでは歩止まりが0.9%ですむはずがない。
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