私の意見
処方と薬価について
佐藤 二郎
1
1岩手県立釜石病院
pp.684
発行日 1966年5月10日
Published Date 1966/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201309
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昨年11月より薬価基準を4.5%引き下げて,そのうち3%を技術料に振替えたことは周知のとおりである。しかして支払側は今後も薬価基準の適正化と称して毎年引き下げ(場合によつては引き上げもあるという)を行なうべしと主張している。すなわち薬価基準を改めなければ値段の下がつた分だけ薬による不当収益となるというのである。したがつて購入価格が下がれば薬価基準を下げるのは当然というわけである。この点まことにもつともであるが最近なぜかくもやかましく薬価基準をうんぬんするのかといえば,薬剤による医療費の伸びが急激であつたことにも起因するようである。
しかしながら日進月歩の医学発展は必然的に薬剤の開発を促進し,極言するならば新製品は雨後の筍のように派生し,プロパー氏の現われるごとに新薬の紹介となるしだいである。しかも製薬会社も社会保険の点数制にうまく便乗するよう価格剤形をくふうしてくるのである。つまり新薬の導入は間接的ながらも薬剤料の伸びをもたらしていることは否定できないようである。ここにおいて医師は薬で儲けているのではないかという疑念が生ずるのもやむをえないことかもしれない。すなわちマージンの大きい薬を多く使用すればそれだけ実収が増えるという制度に問題があると考えられるのである。これは現行甲乙両表とも処方料が僅少で,ことに甲表では投薬により損失をまねくという不可思議な事実を知らなくてはなるまい。
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