私の意見
保険医療に対する一つの見かた
佐藤 実
1
1社会保険葛飾病院・内科
pp.533
発行日 1966年4月10日
Published Date 1966/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201270
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昭和41年から1年以内に,医療保険制度の抜本改正があるといわれ,改正の問題点は,①医療機関が地域によつて偏在しないよう計画的に整備する。②医師の診療報酬体系の適正化。③国民健康保険,政府管掌保険,組合健保と各種に分かれている現在の医療保険制度を総合調整することであると鈴木厚相は述べているが,医療を受ける側が医療保険という言葉をどのように考えているか,興味ある1例を報告してみたいと思います。私が東京の葛飾という下町で,患者を診療するようになつてから1年有余になります。私が勤めている病院は,全国で70ほどある社会保険病院のひとつです。この社会保険病院は,東京に6つあり,各都道府県に適当に配置されて,各県の保険課の指導のもとに運営されている公立病院です。ですから,敷地・建物・設備は,健康保険財政の予算から捻出されています。当病院は,昭和23年に設立されて,被保険者のための病院として現在にいたつています。私が,ここにきて驚いたことは,まず,この病院にくる患者が皆非常に貧しいということでした。
私は,この病院にくる以前は,千葉にある社会保険病院に勤務していましたが,あまりに患者の層が違うことにびつくりしたのです。なるほど病院周辺を見まわしてみると,いわゆる「ケットバシ屋」と称する,たとえば,プラスチックの型を抜くことを生活の糧にしているひとびとばかりです。そして雨が降ればほとんどの家庭が,床下浸水となります。
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