薬の反省
いわゆる肝治療薬
名尾 良憲
1
1都立豊島病院・内科
pp.502-503
発行日 1966年4月10日
Published Date 1966/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201255
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肝治療薬には非常に多くの種類があり,そのいずれを選択すべきかはむずかしい問題である。それのみならず個々の薬剤が肝障害の改善に対してどのように作用するかという基本的な問題についても明確でないものが多い。肝炎などは自然治癒傾向が強いから,特別な薬剤を用いる必要がないという極端な意見さえある。なるほど肝障害に対して起死回生の劇的効果を示す薬剤のないことは確かであるが,急性肝炎は別としても,遷延性ないし慢性肝炎,肝硬変症に対しては,薬剤を吟味して用いれば,かなりの効果が見られると思う。
肝疾患においては,心疾患とか胃腸疾患と異なり,病変の改善,悪化がはつきりした症状として表現されないことが多い。それゆえ,最初に使用した薬剤を漠然と長くつづけ,変更するのがおつくうになる傾向がある。また手もとにある薬剤をどの肝疾患に対しても画一的に用いる習慣も見られやすい。肝治療薬は戦後大きな転換を示した。以前硫酸マグネシウムの内服が唯一な療法と考えられ,そのために下痢を起こし,栄養物の吸収が阻害され,かつ蛋白質摂取の制限が行なわれたので,なおさら肝疾患の治癒に悪い影響があつたと考えられる。
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