今月の表紙
ハイデルベルクの薬学博物館
本田 一二
1
1毎日新聞社<大阪>学芸部
pp.200
発行日 1966年2月10日
Published Date 1966/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201172
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ハイデルベルクの古城は,対岸の山腹をぬう「哲学者の小道」をたどりながら,ネカー川越しにながめる方が印象的である。緑の中に,淡褐色の古城のレンガが映えて美しい。この古城の中に「ドイツ薬学博物館」がある。中世の薬局が再現され,諸種の蒸留装置や大小のハカリ,製薬用の諸器具,薬を入れる美しい陶器のつぼなどが多数展示され,昔の薬学,化学者の苦心のあとをしのぶことができ,興味深い。
ルプレヒト・カール大学ハイデルベルクは,1386年の創立で,ドイツ最古。年代記をひもとくと,医科の教授もはじめは僧籍の独身者であつたが,1498年から妻帯者を教授にしたという。学問が,僧職から俗人の手に移ったのである。中世の大学は,教育に重点がおかれ,研究は従であつたが,ハイデルベルク大学は,16世紀に植物園を設けて薬用植物を栽培,17世紀になると,実験室をつくつて製剤の研究をはじめた。臨床講義は,1743年から行なわれた。世界に冠たるドイツ医学も,200年前はきわめて牧歌的であつたらしい。
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