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医療事故をめぐる問題
pp.1211
発行日 1965年8月10日
Published Date 1965/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200955
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医師などの誤診や処置の手落ちで,死亡したり,思わぬ後遺症をのこしたりすることは,苦情が厚生省に持ち込まれるものだけでも年間40〜50件を数えているといわれ,表面に現われないものも含めると,この種の事故は年間少なくとも100件を下らないと考えられている。
ところが,現在の制度ではこの種の医療事故に対して,被害者はまず加害者である医師などに損害賠償の請求をし,両者の間で協議がととのわない場合は,民事裁判に訴えるしか頼れる道がなく,結局はうやむやのままで終る場合が少なくなかつた。また,東京都や神奈川県の医師会など,一部の都道府県医師会では,昭和35年頃から「医事紛争処理特別委員会」を設けて,顧問弁護士をおき,会員は月々一定の搬出金を納入して損害賠償金の支払いにそなえ,被害者から損害賠償の請求があれば,当事者である医師がそれを委員会に持ち込み,いわゆる示談の方法で,短期間に比較的有利な賠償金で解決するようにしている。この制度は,もちろん被害者にとつてもわが国の民事裁判の現状からみれば便利なものであろうが,本来は主として医師を救済するために設けられたものであるから,被害者が十分に納得のいく損害賠償金を獲得することは困難であると思われる。
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