特集 薬剤事故
薬剤事故をめぐる最近の裁判例
松倉 豊治
1
1兵庫医科大学
pp.296-299
発行日 1978年4月1日
Published Date 1978/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206502
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薬剤事故概観
1.統計的事項
医療事故の中で薬剤に関係するものはかなり多いとみられるが,その実数は到底正確にはとらえがたい.最近,法医学領域の文部省科研費総合研究として行われた医療事故の実態調査の結果1)をみると,注射事故36.0%,常用量での薬物服用事故2.7%(これだけですでに40%を占めている),このほかに薬物の過誤使用が若干あり,麻酔事故が全体の40.7%(大半が麻酔剤によるショックまたは中毒と心不全に関するものという)を占めている.これらをも含めると,この調査資料の約80%という高率を薬剤事故が占めていることになる.もっとも本報告の資料はすべて司法解剖されたものであるので,その意味での事例集積があるものとみなければならない.
一方,かつてなされた日本医師会法制委員会の調査2)では,1,640例の医療事故のうち注射によるもの546,麻酔事故48,投薬40で,計634例約38%である.また1962-74年度末までの大阪府医師会処理紛争例648例中に197例約30%の注射事故があり,これに麻酔剤に関するものを加えると,やはり約40%になる状態である.
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