正常値
血清アルカリホスファターゼ
北村 元仕
1
1虎の門病院・生化学科
pp.438-439
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200753
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正常範囲の混乱
図1は,全国174カ所の綜合病院の検査伝票のなかから血清アルカリホスファターゼ(以下ALPと略記)の正常値をぬき出し,まとめたものである。これでみるとまず第一に,単位名不明のものが大半を占めている。単位により表示値は大巾に異なることが多いから,ここでは実際の検査データを相互に比較することが無意味である。第二に,同じBodansky単位,あるいはKing-Armstrong単位と明記されていても,記載の正常値は必ずしも一致していない。例をとれば,単にALP4.0単位というとき,これを上昇と判定するもの8,上限16,ほぼ中央11,下限8,そして低値となすものが3病院である。もしまた,4.0"Bodansky"単位と明記した場合でも2カ所は上昇値となし,他の2カ所は低値ないし下限と判定するであろう。
正常値はいうまでもなく検査データに臨床的意味を求めるときの尺度である。ものの長短は,ものさしによらずともおおよその見当はつく。しかし精密な作業になればそれだけ精巧なものさしが必要になるのと同様に,科学的な診療にはどうしても正確な正常範囲が欲しい。図1の正常範囲は,わが国の代表的な病院で現実に使われているものさしなのである。正常値は合理的な診療の基礎であるから,これはわが国医療の一つの混乱ということになるだろう。
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