アイソエンザイム・7
アルカリホスファターゼ
中山 年正
1
1虎の門病院生化学科
pp.786-792
発行日 1981年7月15日
Published Date 1981/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911285
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アルカリホスファターゼ(Alkaline phospha-tase;ALP, EC 3.1.3.1)の性状が臓器によりそれぞれ異なることは,既に1950年以前にアルコール沈殿による溶解度差(Hommerberg,1929),胆汁酸阻害(Bodansky,1937),CN−,F−阻害,Mg2+活性化(Drill,1944)などの報告があり,現在のアイソエンザイム的考えが示唆されているが,当時の関心は薄かったようで,代表的な総説はいずれもこうした異種酵素の存在を無視しており懐疑的であったことが分かる.
こうした状況が決定的に打ち破られたのは,Bodansky (1948)のヒスチジンをはじめとするアミノ酸阻害の成績に触発されて行われたアミノ酸のサーベイで見いだされた臓器特異阻害剤"Lフェニルアラニン(LPhe)"(Fishman,1962)と,胎盤ALPの著しい耐熱性(Neale,1965)の発見であった.いずれも現在でも判定の基準となる非常に優れた方法であり,血清のようなALP混合物中の特異的検出・同定法として用いられている.当時はLDHをはじめとして酵素の多様性の認識が広まりつつある時代であったが,上記の知見はALPに臓器特異性を有するアイソエンザイムとしての確固たる地位を与え,広範な基礎的・臨床的研究への突破口となった.
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