私の意見
日本の看護婦にのぞむこと—医師の立場から
浅利 譲
1
1国立療養所村松病院医務課
pp.584
発行日 1964年7月10日
Published Date 1964/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200381
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最近,新しい教育を身につけた看護婦は,よく医師と看護婦とは対等だという。6月号所載の川島さんのご意見もそのようである。しかし医師にいわせると,おそらくだれ一人としてまつたく対等だ,とはいわないであろう。看護婦の側が勝手にそう思つているから物事が混乱するのである。看護協会のお歴々が近来大いに力こぶをいれていることの一つに,看護婦の地位向上というテーマがある。これは非常にけつこうなことである。なんといつても看護婦は技術者であり,技術革新時代のこんにち,その地位が高められ,待遇も向上することは,はなはだ望ましいことと思う。しかしながらそれが,医師と看護婦とが対等だという方向に話をもつていかれたのでは,医師のみならず患者も迷惑するであろう。当の看護婦だとてこの「対等概念」を実践されたら窮することが多々あると思う。たとえば明日某患者の胃切除術をやりたいと,主治医が考え,病棟婦長の意見を求めたとする。このさい,看護婦と医師とがまつたく対等なものならば,婦長は部下看護婦の意見を綜合し,手術をするかどうかきめることになる。さいわい「手術OKです」ということになればいいが,たまたまその日は看護婦のほうにつごうの悪い人が多いといつたとき,おそらく手術は延期するように求められるであろう。
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