特集 糖尿病患者を診る―治療と兼科のポイント
扉
弘世 貴久
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1東邦大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌学分野
pp.1373
発行日 2014年8月10日
Published Date 2014/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107687
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厚生労働省の「平成24年国民健康・栄養調査報告」では前回平成21年の調査と比し,糖尿病の可能性を否定できない人の数(境界型と考えられる)が初めて減少した.国民の健康に対する意識の向上がこの結果をもたらしたのであれば,きわめて喜ばしいことである.しかし,糖尿病が強く疑われる人は890万人から950万人に増加しており,まだまだ「糖尿病患者が減少している」わけではない.
糖尿病患者がいかに多いかを実感するのは糖尿病外来で診察をしている時にほかならないが,病棟でもしばしばそれを感じる.専門医の集合体である大学病院で勤務していると,実は糖尿病治療で入院する患者よりも,はるかに「兼科(併診)」症例が多いからである.この兼科とは,「糖尿病以外の疾患の治療を目的に入院加療するうえで,糖尿病・耐糖能異常が明らかであり,それが原疾患治療に影響を与えうる症例に対し,複数の科が共同で診療に当たること」である.あるいはステロイド治療や高カロリー輸液のように,もともと糖尿病・耐糖能異常がない患者の血糖値を他疾患の治療により上昇させてしまう場合の管理も含まれる.後者のような場合,血糖値の上昇に気づかないまま治療が続けられ,重篤な高血糖を呈してから慌てて専門医にコンサルトがなされる場合も稀とは言えず,すべての診療医が「血糖値」について常に配慮を怠らないようにしなければならない.もちろん糖尿病科の存在しない病院では,主科がこの「兼科」にあたる診療も受け持たなければならないわけで,血糖値異常はすべて糖尿病科に「丸投げ」というわけにはいかないのである.
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