特集 進化し続ける内科診療―世界が認めたブレイクスルー
扉
上野 文昭
1
1大船中央病院
pp.9
発行日 2013年1月10日
Published Date 2013/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106600
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Japan Domesticから
Global Standardへ
『medicina』の創刊から半世紀が経過した.筆者が医学に無縁でBeatlesにうつつを抜かしていた中学生の頃から,本誌は日本の内科医に常に適正で最新の医学情報を提供し続けていたわけである.当時から日本は文化的な先進国であった.世界に誇れる診療行為も決して少なくなかったはずである.しかし,そこに自惚れと慢心があったのではないだろうか.日本のよさを世界に発信して公平な評価を得ようとせず,また世界のよさを取り入れようともせず,日本独自の内科診療が形成されていった.筆者が米国での臨床研修から戻った1970年代には,臨床におけるあまりの隔たりに愕然とした.特に専門領域の医学誌が伝統芸能の保存に執心しているなかで,『medicina』だけは異端児のような存在であり,世界の内科医たちと情報共有が可能であった.
やがてIT化の波が押し寄せてきた.情報が瞬時に共有されるフラットな世界があらゆる分野で形成され,医学においても例外ではなくなった.蛙の住んでいた小さな井戸がいきなり大海と繋がった今日,若干の人種差や文化の相違は別として,Global Standardを否が応でも意識せざるをえない時代となった.現代の日本の臨床医学は世界のよさを素材としながら日本の味付けで仕上げた美味しい医療の提供を可能にしている.半世紀にわたり気を吐いていた『medicina』がようやく異端児ではなく,当たり前の存在として認められる時代が到来しているように思われる.
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