書評
《シリーズケアをひらく》死と身体―コミュニケーションの磁場
日下 隼人
1
1武蔵野赤十字病院小児科
pp.1799
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107522
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講演の記録はつまらない.あるいは,読んでいてなんだか悔しい.話されているその場ではきっともっと楽しい話や言いよどみ,言い間違いなどが混じっていたのだろうし,なんといっても講演の醍醐味は話す人の口調,表情である.それらが「(笑)」などという記載を除いてほとんど消去されているのだから,気の抜けたビールを飲んでいるような不快感が残らないことがない.そうわかっていても,つい講演を記録した本や対談集に手を出してしまうのは,その話し手が気になっている,もっと言えばどこかで自分がファンになっているからである.
本書は,著者が朝日カルチャーセンターで行った「講演録」が中心となっている.『ためらいの倫理学』(角川文庫)という「衝撃的におもしろい」本で出会った内田樹という同世代の中年の,「とほほ」感覚という表現にけっこう参っている私は,結局また手を出してしまった.そして,「気の抜けた」ものであるはずなのにこれだけおもしろいのだから,やっぱり講演を聞きたかったとまた地団駄を踏んでしまうのである.
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