今月の主題 脳磁図で何がわかるか?
話題
脊髄磁場計測と臨床応用
川端 茂徳
1
,
四宮 謙一
1
,
大川 淳
1
Shigenori KAWABATA
1
,
Kenichi SHINOMIYA
1
,
Atsushi OKAWA
1
1東京医科歯科大学整形外科
キーワード:
脊髄誘発磁界
,
脊髄誘発電位
,
非侵襲的脊髄機能評価
Keyword:
脊髄誘発磁界
,
脊髄誘発電位
,
非侵襲的脊髄機能評価
pp.1085-1089
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102069
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1.はじめに
近年,MRIなどの画像診断装置の進歩によって脊髄の圧迫や髄内病変などの形態的な異常は容易に把握できるようになった.しかし,高齢者などでは加齢変化により脊柱管が狭窄し脊髄が圧迫されていても,脊髄機能障害をきたさないことも多く,画像のみで脊髄機能障害を診断することはできない.
脊髄機能診断法としては体性感覚誘発電位,経頭蓋磁気刺激筋誘発電位,針筋電図などの電気生理学的検査が現在一般的に行われているが,おおまかに脊髄障害の有無を診断できるのみで,詳細な障害部位診断は困難である.詳細な脊髄障害高位の診断には脊髄誘発電位によるインチングが有用である(図1)が1~3),体表からの測定では正確な診断ができないため4,5),硬膜外腔など脊髄の近傍に電極を設置する必要がある.電極の挿入は侵襲的かつ熟練を要するため,診断のために気軽に行う検査とはいいがたく,広く用いられていないのが実状である.
一方,脳の分野では神経磁界測定が脳磁図計として臨床応用され,脳機能が体表から非侵襲的に測定されている6).電流は髄液・軟部組織で拡散し,骨組織で減衰するなど周囲組織の影響を大きく受けるのに対し,磁界は周囲の生体組織の影響を受けないため,神経磁界測定は電位測定に比べ体表から神経活動を評価するのに適している.
筆者らは神経磁界測定を脊髄に応用して体表から非侵襲的に脊髄障害部位診断を行うことを目標に研究・開発を進めている.脊髄は脳に比べて深部に存在し磁界が小さいことなどから,ヒトの脊髄誘発磁界はこれまで測定が困難であったが装置の進歩により測定が可能になり,現在臨床応用間近なレベルに近づいている.
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