連載 BOOKS
―「死と身体 コミュニケーションの磁場」内田 樹/著―ケアする人生,ケアされる人生を豊かにする一冊
反町 吉秀
1
1青森県東地方健康福祉こどもセンター保健部(青森保健所)
pp.264
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100155
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本書は,フロイトの精神分析,レヴィナス哲学,武道の修行を1つのものとして受け止める哲学者・内田樹氏による「よりよく生きるための技法」についての珠玉の論文集である。
著者は「第1章 身体からのメッセージを聴く」において,社会全体が「脳化」し,脳―身体二元論が一般化するなかで,「身体は私の道具なのであるから,好きなだけこき使って良く,身体はそのすべてのリソースを捧げて脳の欲望に奉仕すべきである」というひとつのイデオロギーが猛威をふるっている,と厳しく指摘する。ここでの議論から,医学的なものの見方に内在する脳―身体二元論の危うさに気づき,脳も身体の一部であることを踏まえ,身体の声に耳を傾けることの大切さとその意義を知ることができる。また,本書のなかではとくに議論されていないが,日本社会における社会現象としての過労死にも,このイデオロギーは多大な寄与をしているかもしれないと評者は思う。
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