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Case : 診断は何か?
患者:40歳,日本人女性.「Crohn病疑い」として消化器内科で精査・フォローアップ中.
主訴:腹痛,嘔気.
病歴:5年前(X-5年,35歳時)から,繰り返す間欠的な腹痛発作を認めていた.X-1年(39歳)の2月9日に生じたという「腹痛と発熱」のエピソード以降,この「腹痛と発熱」が2〜3カ月に1回ほど反復していたという.この年から消化器内科で診療されるようになり,「Crohn病疑い」とされていた.今回,X年2月7日に発熱と腹痛,下痢を生じた.食事を止め成分栄養剤(エレンタールⓇ)で様子をみていた.しかし改善がなく,熱も2月14日に再発したため,消化器内科を臨時受診.絶食の指示となり,2月14, 15日は外来で補液を受けていた.翌16日は,午前中解熱していたので味噌汁を飲んでみたら,午後に嘔吐し,やはり発熱したため再度受診.そのまま緊急入院となった.
<内服薬>
プロトンポンプ阻害薬,整腸薬,メサラジン.
<腹痛について>
◦下腹部〜正中〜胃部
◦下痢はあるが,嘔気のほうが目立つ
◦36歳(X-4年)頃から続く,2〜3カ月に1回程度の発作的な鋭い腹痛
◦鎮痛薬を内服して1週間程度で消失していた
◦発熱は40℃近くある時と,そこまでいかない時があった
◦ストレスがかかると出現する場合が多い
◦血縁者で同様の症状の者はいない
<発熱について>
◦マックスで40℃
◦持続期間は毎回2〜5日程度
◦強い炎症反応と腹痛を伴う
◦終わってしまうと元気
◦バラつきはあるものの1〜3カ月に1回
◦複数のエピソードにおいて,「短期間のうちに,抗菌薬の投与なしで解熱・データの正常化」がみられた
身体所見:第一印象;安定.体温38.0℃,血圧96/68mmHg,脈拍数109回/分,SpO2 97%(室内気).
胸部聴診は正常,腹部は平坦で柔らかい,臍周囲の軽い圧痛を認める,皮膚は乾燥・湿潤なし,四肢末梢の冷感なし,明らかな皮膚病変は認めない.
主な検査所見:
<血液検査>Alb 3.1g/dl,AST 16IU/l,ALT 12IU/l,LDH 178IU/l,γ-GTP 41IU/l,BUN 8.9mg/dl,Cr 0.59mg/dl,CRP 11.92mg/dl,WBC 18,000/μl(Neut 93%,Lym 4%,Mono 2%,Eos 1%),Hb 12.6g/dl,Plt 40.9×104/μl.
<腹部骨盤造影CT>少量腹水,腸間膜リンパ節腫脹,腸間膜ひだの肥厚.
入院後経過:入院翌日には解熱した.上部・下部消化管内視鏡で有意な所見なし.ダブルバルーン小腸内視鏡で,空腸に小びらんが散在していた.診断はつけきれないものの,やはりCrohn病(初期あるいは小腸限局性)とされた.体調はすっかり改善されていたが,受けもっていた初期研修医が全経過を振り返って,やはり奇妙な経過であると感じたため,「何か別の基礎疾患があるのでは」と総合内科コンサルトが提案された.
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