REVIEW & PREVIEW
肺高血圧症診療の進歩
宮川 一也
1
,
江本 憲昭
1,2
1神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野
2神戸薬科大学臨床薬学研究室
pp.916-918
発行日 2013年5月10日
Published Date 2013/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106814
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最近の動向
肺高血圧症(PH)は安静時平均肺動脈圧が25mmHg以上に上昇した状態と定義され,臨床病態により5つの臨床分類グループに分類されている(表1).第1グループの肺動脈性肺高血圧症(PAH)に含まれる特発性PAH,遺伝性PAH(従来の原発性肺高血圧症;PPH)は約20年前までは有用な治療法がなく,平均生存期間2.8年と予後不良の疾患であったが,近年,新たな特異的治療薬が開発され予後の改善が得られるようになっている1).現在,特異的治療薬の適応となるのは第1グループのPAHであり,プロスタサイクリン(PGI2)製剤(エポプロステノール,ベラプロスト),エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン,アンブリセンタン),ホスホジエステラーゼ5(PDE-5)阻害薬(シルデナフィル,タダラフィル)が主な治療薬となっている.
第4グループの慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は,血管内腔の血栓性または線維性の狭窄,完全閉塞により肺動脈圧の上昇をきたす疾患であり,PAHと同様予後不良であることが知られている.CTEPHは手術治療(肺動脈内膜摘除術)により根治し得る疾患であるが,手術適応となる症例は多くないうえ,薬物治療の効果も乏しい.近年,このような手術適応のないCTEPH症例に対する治療法として肺動脈バルーン形成術が注目されている(図1).バルーンによる狭窄血管の拡張により肺動脈圧の著明な低下が得られることが知られており2),治療法としての確立が期待されている.
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