REVIEW & PREVIEW
悪性腫瘍に対する分子標的治療
中村 朝美
1
,
木村 晋也
1
1佐賀大学医学部内科学講座 血液・呼吸器・腫瘍内科
pp.540-543
発行日 2013年3月10日
Published Date 2013/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106720
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最近の動向
今日に至るまでがん化学療法の中心的役割を担ってきた殺細胞性抗がん剤は,DNAの修復や細胞の分裂,増殖の過程に作用してがん細胞を殺すことにより抗腫瘍効果を発揮する.しかし,がん細胞だけでなく正常細胞にも同様に障害を与えてしまうため重い副作用が出現する.一方,分子標的薬はがん細胞の増殖,浸潤,転移に深く関与している分子を同定し,その分子を阻害することにより腫瘍の増殖を抑えることを目的に開発された薬剤である.がん細胞に特徴的な分子を標的とすることで腫瘍特異的に効果を発揮し,正常細胞に対する副作用が少なくなると期待される1).
日本では2001年に転移性乳がんに対するトラスツズマブ(ハーセプチン®)が承認されたのをかわきりに,現在では慢性骨髄性白血病などの血液疾患,非小細胞肺がん,大腸がん,腎細胞がんなど幅広い領域のがんで使用されている(表1).慢性骨髄性白血病では以前はほとんどの患者が数年で亡くなっていたが,イマチニブを用いた場合は6年生存率が95%2)と,劇的な予後の改善が得られている(図1).また,腎細胞がんのように,これまで効果が期待できる薬剤がなかった領域のがんに対しても分子標的薬が新たな治療戦力として用いられ,生存期間の延長が得られている3,4).このように分子標的薬はがん治療においてきわめて重要な役割を担うようになってきた.
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