今月の主題 肝硬変update―より良き診療のために
扉
福井 博
1
1奈良県立医科大学第3内科
pp.1113
発行日 2012年7月10日
Published Date 2012/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106026
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肝硬変は長期にわたる肝細胞の壊死,脱落に対して著明な線維化と再生結節形成をきたす慢性肝疾患の最終像です.原因にかかわらず,肝構築の改変は門脈圧亢進症を惹起し,肝細胞量の減少は肝機能不全をもたらします.肝再生は本来,壊死,炎症に対する修復反応ですが,このサイクルの加速は一方で肝発癌につながります.肝硬変では全身血行動態,代謝動態は著しく変化しており,変化の程度に応じて肝外臓器・組織に多大な影響が及びます.臓器相関という概念がここから育ったのも不思議ではありません.
肝臓が「沈黙の臓器」と言われるのはこの死に至る病が無症状のうちに進むからです.多くの患者さんと向き合う医療現場で私たちは「専門医との出会いがあまりに遅い」という無念の思いを噛み締め,救命のための努力を重ねる一方で,1例1例の問題点を分析しています.肝硬変は八方手を尽くして治療すべき疾患であり,かつ確実に予防できる疾患でもあります.肝硬変の予防は肝癌の撲滅に直結します.線維化の機序が解明され,抗ウイルス薬などの新薬の開発が相次ぐなか,肝硬変が「治りうる」疾患へと変貌しつつあることは疑いを入れません.しかし,この医学研究のめざましい成果を一人一人の患者さんに本当に還元するためには一般医と専門医のさらなる連携が必要であり,そこで初めて本症の予防,早期発見,適切な治療が現実のものになることを強調したいと思います.
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